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[見出し]インディ我戸川作品

 

家族紹介

ガチャくん

 ガチャが家に来たのは90年の春分の日である。

 かつてウチでは動物を飼うだけの余裕がなかった。物心付く前には子犬との悲劇的な別れも体験した(そのうちどこかで書くだろう)。私にとってヒト以外の動物と一緒に生活することはあこがれであった。小学生時代の終わり頃にようやく(すくってきた)金魚を飼い始めた。多少の余裕が出てきた88年には妹の誕生日をきっかけにセキセイインコを飼い始める。
 そして89年の冬、ついにウサギを飼い始める。鼻がぺちゃんこの彼女は「ペチャ」と名付けられた。この子は非常に人なつこい性格でたくさんの時間を共にすることが楽しみだった。しかし彼女は1年ほどで病死した。

[写真]ガチャ

 彼女の死は私や家族の飼い方も原因のひとつだった。ペチャがいなくなった家の中は暗く、また彼女の死に何らかの形で報いたかった。春分の日にはペチャを購入した横浜そごうのペットショップを見に行ったのだが、そこでやはりウサギに目がいってしまった。元気のいい子を1匹買おう。  そうして万全の体制で迎えたのがガチャだったのである。

 ガチャはずっと活発だった。ウチに来たその晩、電気を消して布団にはいると、私の父親が「ネズミだ!」と言って飛び起きた。小さなウサギが来たばかりなのにネズミなど出ては困る。しかしウチはこれまでにネズミなど出たことはないし、ネズミが侵入できるような構造ではない(庭には体長30cmもあるネズミが出没するが)。ということは?
 ガチャは来たその日からケージを抜け出して家の中を探検しようとしていた。その点非常に頭のよいウサギだったのである。

(つづく)


 

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